2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

⑮ボトムアップ型の仕掛け

佐々木禎子さんをモデルとした原爆の子の像はドームを縦に引き延ばしたような土台の上に立ち、大きな折り鶴を高く掲げている。この像はボランディア的な募金運動に始まるものであり、平和記念公園の北の方、公園軸からは少し逸れて置かれている。記念像のこ…

⑭平和記念公園の理想都市軸

平和記念公園は全国的な設計コンペを通して、当時まだ若い建築家丹下健三が処女作に相当するものとして設計した。彼は東京大学助教授となっていた時に広島市の戦後復興都市計画のために国から派遣され、被爆直後の焼け野原になった広島都心部の調査と計画策…

⑬理想主義から機能主義へ

理想は現実を無視して、あるいは現実認識が不足のままに描かれる。広島の理想都市計画は、地面に残る痕跡から、確かに実施に移されたが、さまざまの変化を伴い、理想像が完全に定着するにはいたらなかった。理想都市像ははかない夢ではあったが、だからこそ…

⑫大航海時代の影

『芸州広島城町割之図』でもうひとつ目立つことは、城下町南部を南北に走り、海へと続く三本の堀である。これらは海からの舟運のために設けられたと考えられ、いわば運河都市の様相をなす。新市街を築く際には排水計画が必要であることはこの時代には知られ…

⑪広島城下町の形態構造

桃山時代の広島城下町計画図『芸州広島城町割之図』では、内堀で囲われた本丸が中心となり、中堀、外堀と三重の堀が巡り、上級武士が階層化して配置された。それが都市の北半の中央を占め、さらに中級、下級の武士が東西と南に配置された。南半は中央軸線で…

⑩グローバリゼーションのもとでの被爆都市の意味

広島、長崎の原爆被災はアメリカ合衆国によるものだから、日本人はいっしょに反アメリカを加わるはずだ、などとメディアに発言している勢力が世界のどこかにいるらしい。これは次元の問題であって、私たちはもう一段高い次元から下の次元を見下ろしてどう説…

⑨人間的尊厳の始まり

今日の民主主義社会の常識で言えば、城下町は武士階級が支配した階級社会であり、また城主の独裁体制となっていて、否定すべきものである。城好きが多いとしてもそれはおおかた、趣味の対象に過ぎず、かつての封建社会を好んでいるからではない。天守閣を復…

⑧桃山時代の理想都市像としての広島城下町

自治体としての広島市は核兵器廃絶による世界平和を実現することを目標としていて、そのためにさまざまの都市政策を工夫してきている。それは一種の21世紀的な理想都市構想である。その基盤にある生命尊厳という感情は、さまざまの生命体が集まって生態系を…