脳内でのトップダウンとボトムアップ

眼球のレンズを通って入った光が網膜に像を写し、視神経細胞がデジタル化して電気信号となし、後頭葉の視覚野でデータに分解される。それを再統合しなければ見た対象が何だったのか認識されない。前頭葉は記憶をもとにしてそのデータを解釈する。それが記憶…

脳内のイデアとしての様式:ギリシャ神殿

ギリシャ神殿は木造建築をモデルとして、石で彫刻作品にしたものである。その際に木造の構造は力学的に石造でそっくりにはできないから、ある操作が加えられる。アルカイック期の神殿は太すぎる円柱を持つが、一本の柱は数個の石を積んだものである。重い石…

近世建築と脳

近世の建築史は宮殿が中心となる。建築史の舞台は古代の神殿、中世の教会堂と続き、いずれも宗教建築の範疇にあるが、近世はその枠を超える。とはいっても、宮殿もまた宗教的世界観からの延長上に、新しい世界観の精神表現だったと見ておかなければならない、…

脳科学的な宗教建築史に向けて

建築史を脳科学から解き明かせないか。少し、書籍を物色してきたが、なかなかこれというものに突き当たらない。予備的な考察をしておこう。 古代に神殿が発生したのは、どのようにしてか。 神殿には神像が収容される。屋根がかかった神殿では内部が暗く、ま…

ウィーン脳vsベルリン脳

1871年にプロイセンがフランスとの戦争に勝利すると、ドイツ帝国が創立され、すぐに泡沫会社期と言われるバブルが起こる。バブルは弾け、経済の停滞を招く。しかし、統一される前のドイツの諸国からあらゆるエネルギーが新帝都ベルリンに集中し始める。若い…

カンデルの世紀転換期ウィーン論

エリック・カンデルはノーベル医学・生理学賞受賞者。『カンデル神経科学』を覗いてみたが、神経学百科全書のような体裁で、専門的な論文集のようでもある。堅物の学者さんかと思いきや、『芸術・無意識・脳』は一転して美術史の書。脳科学者が分析する美術…

セミール・ゼキの脳科学的芸術論から

『脳は美をいかに感じるか』に見るモダニズム・アートについてのセミール・ゼキの説は刺激的である。モダニズムの抽象芸術化の傾向の中で、まるで芸術家は科学者になったかのように見えるという。それもあいまいな感想ではなくて、後頭葉の視覚野で起こって…

様式は進化する

ミケランジェロはなぜ、盛期ルネサンス、マニエリスム、初期バロックと変遷できたのか。一定のスタイルに留まるだけでもよかったはずなのに。 そもそも様式はなぜ変遷しなければならないのか。ヴィンケルマンはミケランジェロのバロック・スタイルを批判する…

ペーター・ベーレンスの新古典主義を脳科学から見直す

脳科学によると、脳のある場所で「輪郭」を認識しているようだ。 ヴィンケルマンの言う「輪郭」が思い出される。輪郭はデッサンで重要なものである。ヴィンケルマンはギリシャ彫刻にそれを見た。白い大理石の彫刻はモノトーンの世界である。輪郭はモノトーン…

神の進化過程

脳科学の読書からひらめくことが多々ある。 脳は進化してきた。爬虫類、哺乳類、人間へと。脳幹から大脳辺縁系へ、そして大脳皮質へ。それはコンピューターの発達過程にも似ているという。モデュールから相互作用へ、PCネットワークからWWWへ。そのような進…

ピークシフトの様式論

ラマチャンドランの『脳のなかの天使』は示唆するものが多い。彼は人の心理、脳の働きとして「ピークシフト」という言葉を提示する。正方形と縦に長い長方形を比べると、正方形は安定、長方形は不安定。しかし長方形を好み始めると、縦にどんどん高くなって…