広島サミットに寄せて

 今年2023年5月、いよいよ広島市を舞台にG7サミットが開催される。世界の首脳が一堂に会して、この時代の世界観が歴史に刻まれることになる。今の世界にはさまざまの課題が山積みであり、サミット自体もグローバリゼーションの成功者によるあるイデオロギー表現ともなっているとして批判する人たちもいる。21世紀の今のありのままの構造をできるだけ客観視しながら、この世界がどのように進化していけるのか、未来への希望を抱きながら、自分なりに分析していきたい。

 広島県東広島市出身の政治家一家岸田家から生まれた総理大臣岸田文雄が、地元広島で開催する広島サミットは、もちろん世界の多くの市民が知る被爆地広島という場所がその開催理由となっている。偶然のことではあるが、核兵器の脅威が改めて首をもたげてきた21世紀のこの時期を思えば、運命的で必然の流れもあったのかとも見える。

 この機会に、都市広島の歴史をさまざまに分析し、考察してきた数十年の知見をもとに、この都市がもつ意味を整理しなおしてみたいと思う。地球環境の時代、人新世という視点が現れた時代、広島市を日本の一都市としてでなく、地球共同体(global community)の一都市として、発信すべきものは何かという視点を開拓する思いを下地にしつつ、個々の個別的なテーマやエピソードを列挙してみよう。